toi印食店

toi印食店
「自分の味で、自分の店を出したい」
オーナー様のそんな想いは、インドを旅した経験や、働いてきたインディアンカレー店での時間を通して、じわじわと育まれてきました。その思いがつのり、イベント出店や間借り営業など、実績とファンを積み重ねて、いよいよ念願の「自分のお店」を持つことに。
オーナー様が見つけてこられたのは、元・喫茶店だった少し狭めの二階建て店舗。
出入口やトイレ、階段などの位置を既存からあまり動かさない制約の中、まず1階に厨房を配置することを前提にプランニング。
そのうえで、限られた空間をどう活かすか、どれだけ客席を確保できるか、いくつかのレイアウト案を検討しました。
結果として、2階をメインの客席に、1階にもさりげなく席をしつらえたことで、厨房のにぎわいを感じながら食事を楽しめる場所も確保しました。
また、工事前の急勾配な“はしご”のような階段を、誰もが安心して上がれるような階段にリデザイン。
厨房の機能性や導線、階段の使いやすさ、オーナー様の人柄や料理の味、価格、立地──そのすべてが調和する空間を目指しました。
私たちがつくりたかったのは、ただの「お店の箱」ではありません。
オーナー様の歩んできた背景や、大切にしたい価値観を丁寧に聞き取りながら、“toi印食店らしさ”が自然とにじみ出る店づくりとを心がけています。
素材感を活かす
素材そのものの表情を、あえてそのまま活かす。
内と外、どちらの壁もモルタル仕上げにすることで、静かなまとまりが生まれました。
ざらりとしたモルタルの質感の中に、オーナー様が選び集めたカラフルなインドの雑貨がすっと馴染む。
料理の魅力が空間にほどよく溶け込むように──
そんな意図をもって、素材選びや仕上げを一つひとつ丁寧に検討しました。
仕込み中も絵になる
1階のメインは、“厨房”。
限られた面積の中で、どうすれば店全体が心地よくまわるかを考えたとき、1階に厨房を構えるのが最良の選択でした。
キッチンの様子がほんのり見えるセミオープンなつくりにしたことで、調理中の音やスパイスの香りがすっと空間に広がり、お店の空気を自然に演出してくれます。
オーナー様の手仕事が、そのまま店の個性として伝わる。
そんな「ちょっとした舞台裏」のような厨房になりました。
ファザードデザイン
お店の世界観をそのまま外ににじませるように計画した、思わず立ち寄りたくなるファサード。
インドブルーのベンチは、オーナー様の感性とお店の世界観を象徴するポイントで、右手の小さなカウンターは、オーナー様の“いつか道ゆく人にスパイスをおすそわけできたら”という、“フリースパイスの野望”から生まれたもの。まだフリースパイスの野望は実現していませんが、こういう「思い」を一緒に形にできるのが、私たちらしい店づくりだと思っています。
そして日が暮れると、やわらかな灯りが店全体を包み込み、昼と夜で表情が変わるように計画した照明も、この店の魅力のひとつになっています。
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