【木下】再開*

美芸大を目指していたあの頃、彼と出逢った。

無愛想な表情に好意は持てなかったが、初心者向けで値段もお手頃・・・仕方ない・・・。
半ばあきらめモードで、我が家に彼はやって来た。
なんとか美芸大にも入ることができ、彼の出番は遠のいたが、部屋のインテリアにしては可愛くもなく、でも処分も出来ずに時が流れた。


5年前、憧れのイタリア旅行へ。

たくさんの本物に出会った。

そして後悔。

イタリアの歴史を学ぶ事なく旅した事に・・・。

それから、イタリア史に精通した塩野 七生さんの本に魅了され、ついに「ローマ人の物語」 全43巻に挑戦!

「匙は投げられた」で有名なユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)に差し掛かり、興奮気味でページを捲っていくと・・・。

「うっそぉーーーーーー!!」

「・・・」

部屋の片隅に置いてある彼と目が合う。
彼こそ、カエサルが後継者として指名した初代皇帝の片腕。
軍事面で皇帝を支え、人生を彼の為に捧げた英雄。

「マルクス・ウィプサニウス・アグリッパ!」

ここで再開するなんて・・・。
無知な自分の恥ずかしさと、長い月日が繋がった喜びに、しばし時が止まる。

さて、部屋の特等席はと・・・。


施工管理・現場監督 木下